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風を追いかけて…

  

この作品はあきさんのサイト『あきひかる』との相互リンクを記念して
あきさんにプレゼントさせて戴きました。『風光る』ネタです。
短編小説と言うよりは、おセイちゃんの立場に立ったエッセイと言った
感じですね (^^ゞ

 

 

沖田先生は風だ。掴み処の無い風。
ずっとそう思い続けて来た。
『お前のいる場所はここなのだ…と風に教える草になりなさい』
山南先生にそう言われるまでは。
でも、風はいつも私の傍で吹いていてくれるのだろうか?
やはり私はその不安を拭い去る事が出来ずにいる。
隊内に不穏な空気が入り込んで来た。
何かが起こりそうな予感。
沖田先生も斎藤先生も変わりつつある何かを鋭敏に嗅ぎ取っているようだ。
ふたりとも私には何も教えてはくれない。
胸騒ぎがする。
サラサラと変転の時が流れて行く。
私はその波に流されてしまわないように、しっかりと大地に根を下ろし、そして、時には沖田先生を導き、守り、暖かく照らす太陽のような存在でありたい。
いつだって私はそう思っているのに、逆に沖田先生に導かれ、守られ、暖かく照らされているような気がしている。
風は時に私を暖めてくれたり、涼ませてくれたりして、優しく包んでくれるのだ。
私は沖田先生に何をしてあげられるのだろう?
ずっとそう思っていた私の気持ちをスッと救ってくれたのは、山南先生の言葉だった。
何だか、その言葉は私の一生の指針のように思えた。
例え、どんな事が起ころうと、私は沖田先生に着いて行く。どこまでも。
風を導く為に力一杯背伸びをして、私は大きくたなびき続けたい。
私は強くなる。沖田先生を守る為に。
沖田先生が近藤局長を思うように、私は先生のそばに居続ける。
おなごとして、先生に添えなくてもいい。私は武士だもの。
それは強がりだと解っているけれど………

 

 

ああ……大輪の花のような笑顔を浮かべて、沖田先生が私の方にやって来る。
内心ではいろいろな苦悩もある筈なのに、どうして先生はあんな風に笑えるのだろう?
私には出来ない。感情を剥き出しにしてしまうから。
そんな私を沖田先生は、暖かく包み込んだり突き放したり、そうして少しずつ成長させてくれている。
野暮天だけど、いつも後で思えば先生は誰よりもいろいろと考えて行動しているのだと思う。
斎藤先生が兄上なら、沖田先生は私にとって何だろう。
おなごとして添い遂げられないのであれば、上司であり、同志………?
私はやはりそれ以上を望んでは行けないの?
「どうしたんです?神谷さん」
いつもの笑顔で私の考えを中断させた沖田先生。
両手に団子を持っている。
そんな事だろうと思った。
でも、嬉しい。私の事をいつも気に掛けてくれているのだもの。
「これを食べたら、鍵善に葛きりを食べに行きませんか?」
沖田先生は屈託の無い表情で私を誘う。
「沖田先生は本当に食べる事にしか興味が無いんですねっ!」
あ、まただ。ついつい憎まれ口を叩いてしまう。
「そんな事無いですよ。近藤先生の事、土方さんの事……それに三番目に好きな人の事だって……」
沖田先生が真剣な眼で私を見詰めた。
そんな眼で見詰められるとドキドキする。
「その証拠に団子を持って来て上げたではありませんか?」
罪な人。私をこんなにドキドキさせておいて、最後にはドスンと奈落へ突き落とす。
何度、こんなやり取りがあった事か。
でも、それでもいいか。風はいつだって、自分を導く草木の存在を意識している。
いつも気に掛けてくれている。
それでいい。私は喜んで沖田先生に吹かれてなびき続ける野の草でいられる。
大きく手を広げ、先生をいつでも待っている。

 

 

例え、これからどんな事が起ころうと。
私はうろたえない。きっと。
永遠に、沖田先生のそばに………

 

− 終わり −