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希望の光に包まれて

 

 

手を伸ばすとそこにいる懐かしい顔。
明るい光に包まれて、今、私はまさに彼らの迎えを受けているのだ。
長い療養生活。焦りに似た苛立ち。
仲間達に置いてきぼりにされ、取り残されて行く自分。
どれだけ追い掛けて行きたい衝動に駆られたか。
気持ちに身体が着いて行けない、哀しみ。
この光の中に飛び込んで行けば、私はそんな苦しみから解放されるのだろうか………?
ああ、近藤先生。貴方も私を迎えに来て下さったのですか?
山南先生も……井上さんの姿も見える。
藤堂さんもいる。
………そうか、原田さんも逝ったのか?
みんな、私より先に逝ってしまうなんて………。
変転の日々が私達の上を嵐のように通り過ぎて行ったんだ。
土方さんの姿は見えませんね。まだどこかで元気に闘っているんだな。
祭りの喧嘩、楽しかったよね。
あの光の中に飛び込んで行けば、又、みんな一緒になれるのかな?
暖かな光が、私を優しく誘っている。
ああ…今、行くよ。みんなの所に。
土方さん、待っていられなくてごめん。
私にはあの光が希望の光に見えるんだ。
もう……疲れた。
病いを得て、ついに剣士として立ち上がれなくなった時から、私にとって残りの人生はどうでも良い物になった。
いつかまた立ち上がって、闘いの中に身を置き、その闘いの中で死を迎えたかった。
それも叶わない事が解っていたから、そんな思いを抱えてただ生きているだけの日々は、私にとって苦痛でしか無かったんだ。
でも、誰にもその事は言わなかった。
私の思いを知ったら、皆が哀しむ事が解っていたから………。
だけど………もういいよね?
手を伸ばせば届く安らぎに身を預けてもいいよね?
疲れたんだ………………もう、逝かせて。
土方さん、私は風になって貴方を追い掛けて行くよ。
すぐに追い付くから。
私の気配に気付いたら、ずっと傍に置いて下さいね。
土方さんは生きて。
信念を貫いて、闘い抜いて。
私が出来なかった事を土方さんに託すから。
傍にいて、ずっと見ているから。
みんなと一緒にね。
そう、私はひとりじゃない。
此処でひとりで逝くのか……とずっと思っていたけど。
逝くね……土方さん。みんなの所へ。
そして、貴方の傍に………………

 

 

総司の身体から、大きな眩い光が生まれ、彼の身体を離れた。
そして、それは高く舞い上がり、彼が見ていた希望の光の中にゆっくりと吸い込まれた。

 

 

………………流れ星が一筋流れた。

 

 

その朝、沖田総司は夜が明ける前にひっそりとその生命を落とした。
たったひとりで。
その透き通った死に顔は、暖かい母の胸に抱かれた子供のように無邪気に微笑んでいたと言う。

 

 

− 終わり −