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光彩 〜 総司より歳三へ、出せなかった手紙 〜

 

 

私にとってはいつだって貴方は『光』だった。
貴方がいる方に向いていれば、間違いは無い、そう思って生きていた。
貴方は私に『お前の人生、本当にそれで良かったのか』と問うけれど、私がこれっぽっちも後悔なんかしていない事を一番良く知っているのは貴方でしょうに。
私は貴方の為なら鬼にだってなれる。
この身体が言う事を聞いてくれている間は、その通りに生きて来たつもりだよ。
でも……そろそろお役御免みたい……。
ごめん……もう一緒に行く事は出来ないみたいだ。
私の生命が魂に変わるまでは、もうこの寝床から身動き出来ないよ……土方さん。
弱音を吐くな、って怒鳴られそうだね。
私の青春は満更でも無かったよ。
楽しかったね。
それは貴方の存在無くしては在り得なかった事。
いつでも貴方は私の兄さんだった。
頑固なまでに新選組に拘り続けた貴方を誰が責められるだろう。
非情なまでの貴方の行動は、隊に対する愛情の裏返しだったのに。
それに気付いていたのは、私だけだったのかも知れないね。
貴方の最大の理解者だと自分では自負しているんだ。
私が居なくなったら、誰が貴方を理解してくれるんだろう。
貴方の光が揺るがないように、ずっと傍にいるつもりだった。
悔しいや。それが叶わなくて。
こんな身体、置いて行きたいよ。
魂魄になって貴方に着いて行ったら……迷惑ですか?
貴方を守りたいんだ。
辛くなった時、貴方の支えになりたい。
近藤先生の事、皆が私に隠すから、知らない振りを通しているけど、実は解っているんだ。
苦しんだだろう……。自分を責めただろう……。
せめて、私が傍に居られたら………………
土方さん。もう『私達の分まで生きて』とは言わないよ。
京都の頃のように、新選組の『誠』の旗を高々と掲げて潔い幕引きを、と願っている貴方のその誠がきっと、きっと、転戦して行く貴方の強い味方となる筈です。
私は一足先に逝きますが、貴方の死に様をあの世から見守っていますよ。
半端な事では許しませんからね。
まあ、私が言うまでも無い事で、貴方が自分自身にそんな事を許す訳がありませんね。

 

 

この手紙…貴方に届けるつもりはありません。
本当は、自分の為に書いたのです。
死を間近に控えた自分の気持ちが落ち着いて行きます。
武士として、こんな自分が恥ずかしい。
でも、筆を持てるのもあと僅かです。
半紙を持つ手がすぐに疲れてしまう。
もう起き上がれなくなって随分経ちます。
剣を持てない剣士なんて、こんなに情けないものがありますか……。
土方さん、戦って下さい。精一杯、燃え尽きるまで。
私のように、不完全燃焼のまま、燃えかすにならないで。
剣士として、戦いの中、華々しく討たれたかったけれど、それも叶わなくなった私のこの気持ちはどこに行くのだろう……。
私にはもう夜明けが来ない。
このまま朽ちて行くのなら、せめて心の持ちようだけは、武士のままで死んで行く。
本当は切腹して果てようと思っていたんだ。
それが出来る内に早くそうしていれば良かった。
なぜだろう、まだ戦えると思っていた。
もし、官軍がこの隠れ家を襲って来たら、寝床に座ってでも奴らを斬って自分も果てようと、私は奴らが来るのを心待ちにしている内にその時期を逸してしまったのです。
土方さん……こんな私を笑いますか。
『馬鹿だなぁ〜でも、総司らしいじゃねぇか』 貴方のそんな声が聴こえて来るようです。
うふふ、貴方は逞しいからなぁ〜。
その力強さをいつまでも……。
急がないで、ゆっくり来て下さい。
貴方らしく全身全霊で戦って……。

 

− 終わり −