空と雲と風と

 

※この作品は85000hitのHIRO様からの『童話を書いて下さい』と言う
リクエストで書かせて戴きました(^^)
久々の童話ですが、さて出来栄えはいかがでしょうか?
HIROさん、ありがとうございました。m(_ _)m

 

見上げればあたまの上に高い空が広がっている。
手をのばしてもとどかない雲さん。
とおいね。
ひろみは風さんにそうささやいてみたよ。
ずっと見ているとね、雲さんはゆっくりと形を変えて行くんだよ。
あれは、風さんがいたずらをしているの?
見ているとあきないね。
お空がなみだを流す時、雲さんが灰色になるの。
そんな時はね、お空がさみしそうに見えるよ。
風さん、ひろみをお空にとどけて。
さみしそうな雲さんとなかよくおはなししてあげるよ。
お天気の日は雲さんがひろみを楽しませてくれるから、雲さんがかなしい時はひろみがなぐさめてあげようね。

 

 

今日は朝から公園でおさんぽ。
ママはおせんたくでいそがしいからひとりで来たの。
雲さんはソフトクリームの形になったり、わたあめの形になったりしているよ。
あの雲さんの上でおひるねしたら、きっと気持ちがいいね。
いつものように風さんに言ってみたら、風さんがひろみをふわりと舞い上げたよ。
風さんはぼくだってひろみちゃんを気持ち良く浮かせて上げられるんだよ、ってひろみに言ったの。
ひろみはおめめをとじてみたの。
ふわふわふわふわ、うん、ちょっとこわいかな?
でも風さんはやさしくやさしくひろみをお空にはこんでくれたよ。
ひろみのおうちはあっと言う間にちゃっちゃくなっちゃった。
お空って気持ちがいいね。
涼しくて明るくて風がやさしくて、わたあめのような雲さんがぷかぷかとのんびり浮かんでる。
やがて風さんが雲さんの形を変えながら、ひろみをそっと雲さんのベッドの上にのせてくれたの。
ふかふかベッドの形になった雲さんは、すぐにひろみをゆめごこちにしたよ。
あんなに遠かったお空が手に取るように近くて、雲さんのゆっくりしたゆりかごのようなやさしさが、ひろみの心をあたたかくつつんでくれたの。
雲さんがひろみにこう言ったよ。
ひろみちゃんのようにわたしを見て、ゆめを見てくれる子がいるのはとってもうれしいよ。
みんなおとなになると、ゆめを見る事を忘れてしまうんだよ。
気持ちによゆうがなくなって、いそがしさで人や自然へのやさしさも、景色を見ることも忘れてしまう。
かなしいことだね。
そして、人や自然へのやさしさを忘れたおとなやこどもたちは、とってもおそろしいことをしてしまうことがあるんだよ。
ひろみちゃんはきっと忘れないでね。
たいせつなことはやさしさを忘れないことだよ。
ちきゅうのみんながそうなってくれるといいね。
みんながせんそうやあらそいをやめてくれるといいね。
もっとみんなが心豊かにくらせるといいね……

 

 

 

あれあれ?それを聴いていたまわりの雲さんがいっせいに泣き始めちゃったよ。
ひろみがのせてもらっている雲さんだけは白いまんまでぷかぷか浮いている。
ひろみがぬれちゃうからだね。やさしいね。
まわりの雲さんは灰色になって、雨をふらせているよ。
雲さんたちは下の世界が良く見えるから、何かかなしいことがあったんだね。
雲さん、ひろみは忘れないよ。
だからもう泣かないで。
ひろみはお空も雲さんも風さんもみんな大好き。
だから、いつでもながめているよ。
きれいなお花が花ひらくためにも、お空から太陽が照って、たまには雲さんのなみだが落ちて来て、お水ものんで……
そして、風さんがたねをはこんで。
そんな自然のめぐみがないとね。
自然をこわさないやさしさ。人をおもいやる心。
たいせつなこと、ひろみは忘れない。
教えてくれてありがとう。
ひろみはやさしいおとなになるよ。
あ……まわりの雲さん、泣きやんだ。
何だかえがおがほころんで、お空に明るい日がさしたね。
さあ、そろそろ、ママが心配するから帰るね。
風さん、ひろみをさっきの公園まで送りとどけて……

 

 

「ひろみ……ひろみ!」
ママがよんでいる。
あれ?ひろみはいつの間にか、公園の芝生の上で寝ころんでいたよ。
今のはゆめじゃないよね?
ひろみはつぶやいてみた。
風さんが、そうだよ、とひろみのほっぺをそっとなでて行った。

 

 

− 終わり −

             ※ 『ひろみ』ちゃんの年齢設定は小学校1年生くらいのつもりで書いてみました…